ボーマン膜とは何なのか

ボーマン膜とは、角膜の表面にある角膜上皮細胞の層の下にある細胞の層で、厚さ10マイクロメートルほどの、コラーゲンでできた細胞層です。イギリス人外科医のウィリアム・ボーマン(William Bowman)が発見したことから、ボーマン膜と名付けられました。このボーマン膜の下には、角膜実質層という角膜の中で最も厚みのある層があり、そのさらに内側にはデスメ層(膜)、角膜内皮細胞層があります。
これらの細胞の層には、再生能力があるものとないものがあります。上皮細胞とデスメ層には再生能力があるのですが、その他のボーマン膜、角膜実質層、内皮細胞には再生能力がありません。

レーシックでは、上皮細胞とボーマン膜を避け、その内側を切ってフラップを作り、角膜実質層をレーザーで削ります。角膜実質層には再生能力がないので、レーザーで削って矯正した度が、細胞の回復による影響を受けにくくなっています。そして、再生能力のないボーマン膜も、温存されることになります。
対して、PRKやエピレーシック、レーゼックなどの手術では、角膜上皮をはがす、あるいはフラップとしてめくり、ボーマン膜と角膜実質層をレーザーで削ります。こちらの場合は、患部のボーマン膜は失われることになります。
ボーマン膜を温存できることは、しばしばレーシックのメリットとして挙げられます。しかしながら、なぜボーマン膜を残すと良いのかという点については、あまりはっきりとはしていません。PRKなどに比べ、細胞層を一つ多く残すことができるため、角膜の構成が保たれることは事実ですが、それ以上に詳細にボーマン膜を残すことのメリットを示す実験やデータなどは皆無です。一説では、ボーマン膜があることで角膜の強度が保たれると言われていますが、ボーマン膜がある状態とない状態で、強度にどれくらい差が出るのかを示すデータなども、見たことがありません。また、強度に関してボーマン膜は重要な役割をもっていないとする研究結果もあるようです。
実際のところ、ボーマン膜についての研究はまだまだ発展途上で、一般的には特別な働きはなく、角膜実質層を保護するためだけに存在しているとされています。現に、PRKは術式を進化させながら約30年にも渡って行われている手術ですが、ボーマン膜を失ったことが原因で特別な合併症や障害が起きたという症例は聞いたことがありませんので、ボーマン膜を残すことでレーシックに特別有利な点があるとは言い難いでしょう。
重要な働きを持つ内皮細胞でさえ、再生しないという性質が知られたのは、およそ60年ほど前と比較的最近のことなので、この先の研究でボーマン膜の働きが解明されることはあるかもしれません。しかし、レーシック以前から広く行われていたPRKの例を見た限りでは、ボーマン膜を失ったことで視力に特別な影響が出る心配はほとんどないようです。
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